惣領冬実『マリー・アントワネット』の完成度の高さ
歴史物の漫画を描いている惣領冬実さんの作品に『マリー・アントワネット』があります。
2016年のマリーアントワネット展のコラボ企画として生まれた作品のようで、シリーズ化はされず、一巻のみとなります。
惣領冬実さんの作品は、時代考証もしっかりと為されており、かつ、当時の建物や風俗などの描き込みも美麗なことで有名です。
今回の『マリー・アントワネット』もそんな作品になっています。
1.ストーリー
アントワネットが、オーストリアハプスブルク家からフランスブルボン家に輿入れしてきて、フランスの宮廷生活に馴染むまでの様子が描かれています。
一番ドラマティックなフランス革命の部分や、処刑に際しての毅然とした様子などが描かれていないのは一巻本だから仕方がないでしょう。
通説の、浪費家で夫のルイ16世にも不満があり、、、といった負のイメージを払拭し、最新の研究に基づく本当のマリー・アントワネット像を描いています。
なので、一家団欒の様子が描かれます。
我々は後の歴史を知っているだけに、切なくなります。
ちなみに、ルイ16世とマリー・アントワネットはフランス革命で処刑、子どもたちは幽閉され、あまり幸せではない生涯を送っています。
特に、ルイ16世とアントワネットの息子で10歳で亡くなったルイ17世の生涯は悲しいものです。
ですが、そういう悲惨な時代は描かれていません。
2.とにかく絵が綺麗
漫画の良さはやはり絵があることでしょう。
私は絵も重視しているので、絵が下手な漫画はあまり読む気がしません。
惣領冬実さんの作品は、絵の綺麗さはとても評価されていますし、私もそう思います。
当時の華やかなパリの様子がよく伝わってきます。
当時の風俗の資料としても本当に価値のある作品だと思います。
3.実際の所、ルイ16世とマリー・アントワネットってどうなの?
この二人が本当に処刑される程悪いことをしたのか、定説通りの無能だったのか、これは意見が分かれる所ですよね。
まあ、「本能寺の変の黒幕は誰か」みたいなもんでしょう。
タイムマシンが発明されない限り本当のことは分かりません。
ですが、ルイ16世は優しい王であったようですね。
ただ、国家元首として「優しい」という評価は時として「優柔不断」ということになりますので、国のトップとしての資質があったのかといえば、その適性はそんなになかったのではないかと私は思っています。
マリー・アントワネットに関しては、浪費家と言いますが、一人の人間が使うお金なんて大した額ではないですから、彼女のせいで国庫が圧迫されたということはないでしょう。
また、処刑に際しての肝が据わった様子から「気の強い、芯の強い女性」であったと思われます。
なので、「夫は放ったらかしで愛人を呼んで、、、」といった噂も「否定するのもくだらない、言いたい奴には言わせておけ」という感じだったのではないでしょうか。