高野長英〜異彩を放つ学者、行動力の神〜
高野長英をご存知でしょうか。
幕末の蘭学者、医者であり、壮絶な人生を送った人です。
今回は高野長英について書いていきます。
1.生誕〜青年期
高野長英は1804年に現在の岩手県の武士の家系に生まれます。
家には蘭学書がたくさんあったため、幼少期から自然にオランダ語に親しんでいました。
時は江戸時代、鎖国中です。
高野長英は唯一オランダと貿易をしていた長崎に留学し、オランダ商館の医者として来日していたシーボルトの鳴滝塾で学びます。
ここで、蘭学の知識や医術を身につけていきました。
長崎の鳴滝塾跡
2.シーボルト事件(1828年)
ところが、このシーボルト、シーボルト事件といわれる事件を起こしています。
当時、幕府は日本の地図を海外に持ち出すことを禁止していました。
ところが、シーボルトは帰国する際にこっそり日本の地図を持ち出します。
これが幕府にばれ、シーボルトは国外に永久追放、再渡航禁止の処分が下されます。
またこれに連座してシーボルトに関わっていた人間が処罰されますが、高野長英は上手くそれを流れています。
3.尚歯会時代時代
その後の高野長英は江戸に行き、町医者として蘭学塾を開きます。
そして、江戸で多くの知識人と出会う中で尚歯会のメンバーとなります。
この尚歯会というのは知識人が集い様々なことを話し合う組織でした。
この時に西洋哲学を翻訳したり、飢饉に備えてどのような作物を作れば良いかなどの本を書いたりしています。
ちなみに、当時は蘭学の研究には制限があったため、表向きは高齢者たちの趣味の集いということで尚歯会(歯を大切にする会)という名前になっています。
4.モリソン号事件(1837年)
さて、幕末期の日本には多くの外国船が接近していました。
北方からはロシアが、太平洋からはイギリスがやって来たりと、諸外国の脅威に晒されて続けています。
ところが、この時の幕府の権力者は50人以上の子どもがいたことで有名な11代将軍の徳川家斉。
外国船の接近に対してたいした対策も立てぬまま、安易に異国船打払令(1825年)を定めてしまいます。
近づいてくる外国船に容赦なく砲撃するというこの異国船打払令、いろいろと問題がありそうですよね。
ということで、1837年にモリソン号事件が起きます。
そもそもモリソン号とはアメリカの商船であり、日本人の漂流民を届けにきてくれた船でした。
ところが、あろうことかそのモリソン号に砲撃し追い払ってしまいます。
この対応を批判したのが尚歯会のメンバーであった高野長英や渡辺崋山でした。
高野長英は『戊戌夢物語』という本を書き、モリソン号事件を批判しています。
当然、高野長英は処罰され、今でいう終身刑となり江戸小伝馬町の牢屋に入れられます。
5.牢屋での生活
さて、牢屋に入れられた高野長英ですが、ただでは転びません。
自身の医術の知識を活かして、なんと牢屋の罪人たちの病気を治し、罪人たちのリーダー的存在にまでなります。
そんな中、牢屋が火事で燃えてしまいます。
そしてなんと高野長英は脱獄、そのまま逃亡生活に入ります。
さてこの火事ですが、一説には高野長英が牢屋に出入りしていた人間を買収して放火させたとも言われています。
6.逃亡生活
こうして脱獄に成功した高野長英ですが、人相がバレているため手配書が出回ります。
そこで高野長英は考えました。
「人相を変えてしまえば良いんだ」
硝酸で顔を焼き人相を変えます。
そんな頃、宇和島藩の伊達宗城が高野長英の知識を聞きつけ、かくまってあげたりもしています。
伊達宗城といえば幕末における名君として有名な人物。
罪人であろうと高野長英を能力を認め教えを請うという姿勢が素晴らしいですね。
いろんな場所で逃亡生活を送っていましたが、やがて江戸で名前を変えて医者として活動をし始めます。
まるで追手をおちょくるかのような行動、相当肝が座っていますよね。
7.最期
現在の青山に高野長英が最後に隠れ住んでいた家の跡があります。
表参道のオシャレな通りの一角にひっそりと碑があるだけですが。
1850年、ここで隠れ住んでいた所を見つかり、ボコボコに殴られて取り押さえられ、連れて行かれる途中で息絶えてしまいました。
学者の人生としてはかなり壮絶なものですよね。
8.まとめ
歴史上の人物の中でもすごく異彩を放つエピソード満載の高野長英。
それでも最後まで諦めず自分のできることをし続けた闘志や行動力、たくましさ。
人生において困難なことや理不尽なことはたくさんあるでしょうが、高野長英はそれらに負けず運命に抗い続けたかっこいい人物ですよね。
今でも故郷の岩手県奥州市水沢の三偉人として、後藤新平(初代東京市長)、斎藤実(戦前の首相)とともに尊敬されているようです。
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